地震の備えは大切です
損害保険料率算出機構が2019年におこなった調査によると、「近い将来、あなたが住んでいる地域で大地震が起こると思いますか。」という質問に対し、「起こると思う」もしくは「もしかしたら起こると思う」と回答した地震保険加入者の割合が77.2%、地震保険未加入者では66.8%のことでした。

みんな巨大地震の発生を心配しているんだね。

そうだね、特に東海地方では、地震保険加入者のうち87.1%、地震保険未加入者でも79.6%の人たちが巨大地震が起こる可能性があると回答しているよ。
出典:損害保険料算出機構「消費者の地震危険意識と住居建物属性の調査(2019年調査)」
世界で発生したマグニチュード6以上の地震の約20%が日本付近で起きており、まさしく日本は「地震大国」と言えるでしょう。

でも、地震保険料が高いから加入していないという人も多いよね。

地震保険に加入しなかった理由として、地震保険未加入者の20.9%が「保険料が高かった」「保険料が高いイメージがあった」と回答しているね。「地震で被災することはないと思う」と回答している人も10.5%いたよ。

うーん、「地震保険」って必要なのかな?
みんな加入しているの?
実際どのくらいの人(世帯)が「地震保険」に加入しているのでしょうか。
■地震保険契約件数、加入率、付帯率の推移
出典:損害保険料率算出機構「損害保険料率算出機構統計集地震保険統計」
- 契約件数は、当該年度末の地震保険保有契約件数に基づく。(証券単位)ただし、2013年度以降の契約件数は、12月末の地震保険保有契約件数に基づく。
- 世帯加入率は、当該年度末の地震保険契約件数を当該年度末の住民基本台帳に基づく世帯数で除した数値。
ただし、2013年度以降の世帯加入率は、当該年度12月末の地震保険契約件数を当該年度1月1日時点の住民基本台帳に基づく世帯数で除した数値。 - 付帯率は、当該年度に契約された火災保険契約(住宅物件)のうち、地震保険契約が付帯されている割合。

グラフで見ると右肩上がりで伸びているね。

特に「東日本大震災」が発生した2011年は、付帯率が5%以上も上がっているよ。大地震を目の当たりにして、万一に備えておこうとした人が多かったことだね。

でも、世帯加入率が思ったほど少ないよ。

世帯加入率は、地震保険に加入している世帯の数字なんだ。地震保険と同じような補償をするJA共済などの各種共済は含まれていないよ。
各種共済で地震の補償を付帯している加入者数は公表されていないため、少し前のデータになりますが、2015(平成27)年度に内閣府が住宅を所有している世帯おこなった調査によれば、地震補償がある保険または共済を契約している件数は約1,979万件ありました。
これに一定の仮定を基に計算すると、住宅を所有している世帯(約3,502万世帯)のうち49%にあたる約1,732万世帯が住宅の地震保険・共済に加入していると推測されると発表しています。
出典:内閣府防災担当「保険・共済による災害への備えの促進に関する検討会 参考資料」(平成29年3月)

共済を含めれば半数程度の人は加入しているんだね。

この調査後に熊本地震などが発生しているから、現在はもう少し上がっているかもしれないね。
地震ってそんなに起きているの?
日本ではどの程度地震が発生しているのでしょうか。気象庁の調べによると2019(令和元)年に震度1以上を観測した地震は1,564回、最大震度4以上を観測した地震は40回、最大震度5弱以上を観測した地震は9回ありました。
■2001年以降に観測された震度5弱以上の地震および被害地震の回数
出典:気象庁「2019年12月令和元年12月地震・火山月報(防災編)」
出典:気象庁「2001年12月平成13年12月~2019年12月令和元年12月地震・火山月報(防災編)」

観測された回数よりも被害が確認された回数が多い年があるのはなぜ?。

震度4程度でも花瓶などの置物が倒れたり落下したりすることがあるから、それらによるケガが多いみたいだよ。

東日本大震災や熊本地震が発生した年は震度5弱以上の地震がたくさん起きているね。

大地震後の余震やその影響を受けて周辺地域でも発生しているようだよ。震度1以上を観測した地震も2011年は9,723回、2016年は6,587回と平年よりも2~3倍発生しているね。
大正関東大震災が発生した1923年から2019年まで、震度6もしくは震度6強以上を観測した地震は71回ありました。近年も震度6弱以上の地震で大きな被害が出ています。
■2011年以降に発生した主な地震被害
出典:気象庁「日本付近で発生した主な被害地震(平成8年以降)」

東日本大震災の被害が一番大きいけど、それ以外にも建物が何万件も被害にあっている地震が起きているんだね。

2011(平成23)年以前だと、
なども甚大な被害をもたらしたよ。
内閣府によれば、今後発生が想定されている「首都直下地震」では、住宅全壊戸数が約61万棟、死亡・行方不明者数が約2.3万人と被害が想定されています。また「南海トラフ巨大地震」についても、住宅全壊戸数が約238.6万棟、死亡・行方不明者数が約32.3万人にも上るそうです。

日本各地、いつどこで大きな地震が起きても不思議ではないんだね。

そのためにも「地震保険」に加入して、万一に備えておく必要があるよ。
保険金の支払いは大丈夫?
大地震で被害に遭ったときに保険金が支払われる「地震保険」。その保険金支払いの件数、金額は2000年以降増えています。
■地震による保険金の支払い
出典:日本地震再保険(株)「地震再保険金支払状況」(2020年3月31日現在)
東日本大震災に関する地震は、3月11日東北地方太平洋沖地震、3月15日静岡県東部を震源とする地震、4月7日宮城県沖を震源とする地震および4月11日福島県浜通りを震源とする地震などがあり、それらによる地震保険金の支払合計額は約1兆3,241億円にもなります。

各種共済からも共済金・見舞金が支払われていて、主なところではJA共済連が約9,374億円、こくみん共済coop(全労済)が約1,281億円だったそうです。
出典:JA共済連「JA共済連の現状2020(令和元年度決算)」
出典:Jこくみん共済coop「東日本大震災(静岡県東部地震 (静岡県東部地震・4月7日余震含む)共済金等のお支払い状況(2018年5月末現在)」

うわ!すごい金額だね。でも、もっと大きい地震が起きたら保険金を払ってもらえるの?

そこは大丈夫だよ!地震保険は政府と民間の保険会社が共同で運営していて、大規模な地震では、政府が保険金支払いをバックアップする仕組みになっているんだ。2019(平成31)年4月1日以降は1回の地震によって政府と保険会社が支払う保険金の限度額(総支払限度額)が11.7兆円まで引き上げられているよ。
首都直下地震、南海トラフ地震などの巨大な地震が起きた場合、巨額な保険金の支払いが発生します。しかし民間の保険会社のみでは支払能力に限界があり、政府の関与が不可欠です。契約者が支払った地震保険料は保険会社から再保険会社(日本地震再保険社)を通して、政府に再保険として出され、巨大地震でも滞りなく保険金が支払われるような仕組みになっています。

注意点として、1回の地震で保険金の支払いが11.7兆円以上になることが確実になった場合には、支払われる保険金が削減される可能性があるよ。

えっ!?それじゃあ保険金が出ないこともあるんじゃないの?

関東大震災級の地震が発生した場合でも支払われる保険金の総額が総支払限度額を超えることがないよう適宜見直されているんだ。
総支払限度額の見直しだけでなく、補償内容や地域ごとの保険料率も随時改定がおこなうことで巨大地震が発生しても保険金支払いができるよう対策がとられています。
地震保険が必要な人は?

地震保険に加入しておくことが大切なのはわかったけど、どんな人が絶対必要なの?

日本に住んでいる人なら全員と言いたいところだけど、
は地震保険の加入はしておくべきだと思うよ。
地震で自宅が被災し、修理・建て替えが必要になったとき、地震保険に加入していなければ全額自己負担になります。資金が不足していたら金融機関から借り入れることになり、既存の住宅ローンと併せて返済していかなければなりません。返済が厳しくなりその後の生活が破綻したケースも起きています。いわゆる「二重ローン問題」と言われて、災害が起きるたびに問題視されていました。
また、ローンがなくても貯金、貯蓄が少なければ同じことが起こりえます。これは住宅を所有している人だけでなく、賃貸住宅に住んでいる人も同じです。建物は大家さんが所有しているので修理費用などは大家さんの負担ですが、家財は自分で修理、買い替えなければなりません。また借りていた建物が全壊したら、賃貸借契約もその時点で終了し新たな住居に移る費用も発生します。
生活の再建のための資金としてまとまった金額を保険金として支払う「地震保険」は、収入が不安定で貯金、貯蓄が少ない人ほど欠かせないでしょう。
まとめ

地震はいつ起きるかわからないから、普段から準備しておかなくちゃね。

被害を軽減する対策とともに、万一被災したときには、元の生活に早く戻るための資金に活かせる「地震保険」の加入もよく検討しないとね。
「被災者生活支援再建制度」などの公的支援もありますが、全壊や大規模半壊などの一定条件を満たす必要があるためすべての被災者が利用できるわけではありません。住んでいる場所、建物の構造、収入、資産状況を踏まえて地震のリスクを考えていかなければなりません。