火災保険の長期契約が廃止?
戸建て住宅やマンションなど一般住宅向けの火災保険の契約期間が、2022年度にも現行の最長10年から5年に短縮される見通しとなった。
2021(令和3)年3月22日、報道各社が火災保険の改定を報じました。その内容が火災保険の保険期間が最長で5年までとなることです。
これって大変なことなの?
そうだよ。火災保険の長期契約が事実上廃止なるともいえるよ。
今回の改定はどのような影響があるのでしょうか。
なぜ廃止になるの?
自然災害による保険金支払い
今回の改定理由は自然災害の被害による保険金支払いが増加していることが大きな要因だよ。
火災保険の保険期間の改定は今回が初めてではありません。
2015(平成28)年1月にも改定があり、それまで最長で36年間の保険契約が可能でしたが、改定後は10年間までに短縮されました。
このときの改定理由として、損害保険料率算出機構は、
- 自然災害や水濡れ損害による保険金の支払が近年、増加していること
- 地球温暖化により自然災害の将来予測に不確実な要素が増しているとの研究成果が発表されたこと
をあげています。
自然災害による保険金支払いが増えるなか、保険会社は適切な保険料を検討しているけど、想定以上の被害がでているため長期間の見通しが立てにくくなったんだ。
どのくらいの保険金が支払われているの?
2018(平成30)年に発生した台風21号では火災保険関連だけで9,363億円、損害保険商品全体だと10,678億円と、史上初の1兆円超になったよ。
1兆円!?
2021(令和3)年1月に行われた火災保険料の改定はこの被害が大きく影響しているよ。さらに2019(令和元)年に発生した台風15号、19号はいずれも約5,000億円の保険金支払いがでているけど、この被害は改定内容に反映されていないから長期契約の廃止と併せて保険料の改定が行われる可能性が高いね。
廃止の影響は?
保険料が上がる
火災保険は契約する保険期間が長くなるほど保険料が割安になります。
■長期契約(一時払い)の保険料割引率
*上記の割引率は保険会社によって異なることがあります。
*2019(令和元)年10月1日現在の割引率
どのくらい安くなるのか、1年間の火災保険料が30,000円のケースで見てみましょう。
30,000円×10年間=300,000円
・保険期間10年間の場合
30,000×10年間×(1-0.18)=246,000円
10年間で54,000円、1年あたり5,400円安くなるね。
では保険期間が最長で5年間となった場合はどうなるのでしょうか?
30,000円×5年間=150,000円
・保険期間5年間の場合
30,000×5年間×(1-0.14)=129,000円
5年間で21,000円、1年あたりだと4,200円安いよ。
あれ?10年間契約できたときと比べて1年あたり1,200円割引が少なくなってる!
割引率が下がった分、保険料が上がったよ。10年間だと12,000円の差があるね。
保険料改定の影響を受けやすい
火災保険の保険料が改定されても、現在加入している契約に直ちに影響はありません。改定後に新規に契約する、契約を更新する場合に影響を受けます。
保険期間10年間で契約した場合、10年間は改定の影響を受けることはなかったけど、保険期間が5年間までとなれば短くなった分影響を受けやすくなったね。
保険内容が見直しやすくなる
長期契約の廃止についてはデメリットだけでなくメリットもあります。保険の内容を見直す機会が増えたことです。
保険加入後はそのままにしていて、契約更新のタイミングで見直すことが多いでしょうから、保険期間が長いほど見直しを行わない期間も長くなります。見直しのタイミングが早くなれば、より実情に合ったプランにすることもできるでしょう。
保険料の改定が行われるときは補償内容の改定もセットになることが多いから、自分に合ったプランを選べるチャンスだともいえるね。
まとめ
かつて金利が高かったころは、長期間の積立型の火災保険に加入して配当金や運用益で火災保険料を賄ったうえ、満期返戻金が総支払保険料を上回るなんてこともあったんだ。
低金利の今は、そういった商品は廃止され、長期契約の割引率も2000年代初頭から比べて下がってきているよ。今後の改定では「保険料値上げ+割引率縮小」ということも考えられるね。
う~ん、この先どうしたらいいのかな?
保険期間が5年間までとなっても1年ごとに契約するよりは保険料が安いから、契約する期間は5年間にしたほうがいいよ。
あとはその補償がなぜ必要なのかを考えて、補償範囲を限定することも検討するといいかな。