医療保険の給付金請求などに使われる診断書の画像

診断書がなくても大丈夫?

普通の小羽さん

ねえねえイヌくん。

イヌくん

なにかな?

疑問な尾羽さん

このあいだ近所の奥さんが病気で入院した時、診断書がなくても生命保険から給付金が出たって言ってたけど本当なの?

OKイヌくん

昔は診断書を用意する必要があったけど、今は状況によっては必要としないときもあるんだよ。

ケガや病気などで入院したとき、手術をしたときに生命保険や医療保険から支払われるもののなかに、入院給付金、手術給付金などがあります。
給付金を受け取るためには請求の手続きが必要ですが、その際に重要となる書類が診断書です。
病院によって取得費用は異なりますが、多くの場合は5,000~8,000円程度に設定されています。
最近では診断書を提出しなくても、給付金を受け取れるようになってきましたが、どのようなときに提出は必要ないのでしょうか。またそのようになった背景は何故なのかそれぞれ解説していきます。

給付金請求の流れ

書類を記入する女性
入院・手術給付金などを請求をする際の一般的な流れを見ていきましょう。

Step1 保険会社へ連絡する

保険会社は契約者からの連絡がない限り、状況を把握することができません。入院や手術をした、もしくはその予定が確定した場合には保険証券など契約内容がわかるものを用意して連絡しましょう。

連絡時に準備する主な内容
・契約番号または証券番号(契約が複数ある場合は全ての契約分)
・傷病名 ・入院日・退院日 ・手術名・手術日(手術を受けた場合)

事故が原因の場合は、事故発生日・事故状況なども伝えるとスムーズに手続きがおこなえます。

Step2 必要書類の記入と保険会社への提出

保険会社から取り寄せた書類に必要事項を記入し、必要な書類と併せて保険会社に提出します。保険会社によっては、必要書類をホームページからダウンロードすることができます。

請求に必要な書類の例(医療保険などの場合)
・給付金請求書
診断書
・事故状況報告書 ※不慮の事故を原因とする場合
・交通事故証明書(自動車安全運転センター発行のもの) ※交通事故を原因とする場合

解説イヌくん

診断書といってもいくつか種類があり、入院・手術をしたときには「入院・手術証明書」、通院をしたときには「通院証明書」、後遺障害が残ったときには「後遺障害診断書」、後遺障害の原因が交通事故の場合は「後遺症診断書」と状況によって必要な診断書が異なるよ。

Step3 保険会社による審査と給付金の受け取り

提出された書類をもとに保険会社は給付金が支払えるかその可否を判断します。そこで支払いが可能であると判断された場合は、書類が保険会社に到着した翌日から5営業日以内に給付金を支払うことになります。

イヌくん

書類の記載内容に不備があったり、医療機関への確認が必要な場合は1ヶ月程度時間がかかることもあるよ。

疑問な尾羽さん

そもそも診断書ってなぜ必要なの?

解説イヌくん

保険会社が保険金や給付金が支払えるかを判断するためには、発病時期や診断日・初診日、治療内容や傷病名、手術の術式や施行された部位を確認しなければならないんだ。
稀にだけど、生命保険に加入するときに病歴を隠したり、嘘をつくような「告知義務違反」をしている人が請求している可能性もあるからそれを見極めるために使われることもあるよ。

診断書の取得費用は誰が負担するの?

診断書の取得費用は給付金を請求する人が負担することにとなっています。
ただし診断書を提出したものの、給付金の支払い対象とならなかった場合には診断書取得費用相当額が保険会社から支払われます。金額は保険会社によって異なりますが、5,000~6,000円(通院証明書は3,000円程度)と規定している会社が多いです。

診断書が不要なケースとは?

疑問な表情の女性
このように診断書は給付金請求において重要かつ必要な書類となっています。
一方で入院期間の短期化日帰り手術により受け取れる給付金が少額なため、診断書の取得費用が大きな負担となることもあります。

診断書の代わりになるモノは?

そこで保険会社では診断書がなくても給付金を請求できる「簡略請求」の取り組みを強化しています。
参考:生命保険協会「診断書様式作成にあたってのガイドライン(平成31年3月20日)」

「簡略請求」では診断書に代えて、医療機関が発行する治療費領収書診療明細書に、入院、手術の状況を記入した報告書と併せて保険会社に送ることで給付金を請求できるようにしています。
治療費領収書や診療明細書は原本ではなくコピーの提出でも問題ありませんが、患者名、医療費の請求期間(入退院日または通院日)や手術料(点数または金額)、発行した病院名の記載があるものに限ります。

疑問な尾羽さん

報告書は誰が記入するの?

OKイヌくん

給付金を請求する本人が病名や治療内容を記入するよ。書類の提出は郵送以外にもインターネットによる方法もあるからより早く給付金が受け取れるよ。

納得な尾羽さん

診断書の取得費用や取得するまでの時間が必要ないのはいいわね。

どんなときに不要なの?

「簡略請求」ができる条件は保険会社によって異なりますので、実際の請求の際には各保険会社に確認することになります。
ここでは不要となりやすいケースを紹介していきます。

入院期間が短期間であること

保険会社によって日数は異なりますが、1回の入院が30日以内と規定されているケースが多いです。最長でも60日以内と規定されており、それを超えると診断書が必要になります。
また、期間が短くても入院中に請求する場合は診断書が必要です。

三大疾病によるものではないこと

三大疾病とはがん急性心筋梗塞脳卒中の3つの病気を指します。これらで入院したり、手術を受けたときは診断書の提出が必要になることが多いです。
入院・手術給付金以外でも、これらを保障の対象とした特約、先進医療に関する特約を請求するときも診断書が必要になります。

特定部位不担保および特定疾病不担保適用期間中の請求ではないこと

特定部位不担保とは、身体の特定の部位で発症した病気は保障の対象外になることです。特定疾病不担保は、特定の病気については保障の対象外になることです。
契約条件にこれらが付され、適用されている期間中は給付金の請求ができません。

手術給付金の請求がないこと

入院はしたものの手術は施行されなかった場合のことです。ただし公的医療保険適用となった以下のような手術を受けた場合には簡略請求の対象になることがあります。

生命保険給付金の簡易請求が可能となる主な手術例主要生命保険会社のホームページ上で公開されている情報を基に作成

上記以外の手術でも簡易請求の対象になることがありますので、実際の請求の際は各保険会社にお問い合わせください。

診断書の作成業務は医師の負担?

困惑する白髪の男性医師
「簡略請求」の対象が拡大している背景には、診断書を作成する医師側から問題提起があったとされています。診断書の様式は保険会社によって異なるため、医師側では都度、数十項目もの必要事項を確認し、作成にあたってきました。その結果、医師の業務に多大な負担が発生し、本来の医療体制に影響を及ぼしていると調査報告がなされました。
調査報告によれば、2017年度に1年間で保険会社宛に作成された診断書の枚数は約947万通、作成所要時間は約497万時間と推計され、これらにかかる作業量は、医師約3,000人分の年間労働にも匹敵するそうです。
そこで保険会社では医療機関からの要望をふまえた見直しを行い、医師の作成業務が軽減するよう取り組みを始めています。
出典:日本医師会総合政策研究機構「民間保険会社の診断書作成にかかる医師の負担の実態:研究会の評価と医師の負担の推計」
参考:厚生労働省「第4回民間保険会社が医療機関に求める診断書等の簡素化等に関する研究会 議論の整理(案)」

まとめ

困った尾羽さん

こんな状況では診断書ができるまで何日も待つのは当然だったのね。

焦るイヌくん

保険会社も給付金支払の判断に必要な資料だから、詳細な情報を求めるのは理解できるけど、医師の本業に支障をきたすようでは問題だよね。

長期の入院や重篤な症状では、給付金の請求に診断書が必要になってきます。そのようなときは契約者側で記入できることは保険証券または保険会社に確認して、医療機関の負担を減らすようにするとよいでしょう。