地震で大きく揺れ動く建物のイラスト

イラスト:imacveryさん/イラストAC

強い揺れに見舞われる確率は?

2021(令和3)年3月26日、政府の地震調査研究推進本部は「全国地震動予測地図2020年版」を公表しました。

イヌくん

「全国地震動予測地図」は、近い将来日本各地がどの程度の確率でどの程度揺れるのかを予測し、その結果を地図として表したものだよ。

「全国地震動予測地図」は、1995(平成6)年1月に発生した阪神淡路大震災をきっかけに設置された地震調査研究推進本部によって、2005(平成17)年以降、1~2年ごとに公表されています。

まもるくん

ボクの住んでいるところはどのくらいの確率で大きな揺れが起きるのか気になるね。

OKイヌくん

それじゃあ、公表されているデータを見ていこう!

確率が高い地域は?

2020年からの30年間で震度6弱以上の強い揺れに見舞われる確率分布図

画像:地震調査研究推進本部「地震動予測地図を見てみよう(全国地震動予測地図2020年版)」より
解説イヌくん

上の地図は今後30年以内に日本周辺で起きた地震によって震度6弱以上の揺れが起きる可能性について表しているよ。紫色のエリアが特に確率が高いエリアだね。

驚くまもるくん

こうして見ると、太平洋側に紫色のエリアが多いね。

地震調査研究推進本部の発表でも、

「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」の地図では、北海道南東部や仙台平野の一部、首都圏、東海~四国地域の太平洋側及び糸魚川-静岡構造線断層帯の周辺地域などの確率が高い。

出典:地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図2020年版のポイント」

とされています。
では、公表されている各都道府県庁および北海道の総合振興局・振興局所在地60か所のデータを詳細に見てみましょう。

震度5強以上の確率が高い地域

今後30年以内で震度5強以上の地震が発生する確率が高い地域の表

  •   *「超過確率」とは、ある地点で、ある期間(今後30年または50年以内)で、想定される揺れの大きさを超える確率。
  •   *「付帯率」とは、当該年度中に契約された火災保険契約(住宅物件)に地震保険契約が付帯されている割合。損害保険会社が取扱っている「地震保険」のみの数値であり、各種共済については含まない。

出典:地震調査研究推進本部「全国地震動予測地図2020年版」
出典:損害保険料率算出機構「地震保険 地方(市・区等)別付帯率(2019年度)」

まもるくん

東京都、神奈川県など関東地方、北海道南東地域が多いね。

イヌくん

その他80%超の地域としては、和歌山県和歌山市七番丁和歌山市役所付近(85.2%)、奈良県奈良市二条大路南1丁目奈良市役所付近(82.9%)などもあるよ。

震度6弱以上の確率が高い地域

今後30年以内で震度6弱以上の地震が発生する確率が高い地域の表

悩むまもるくん

四国に集中しているんだね。

解説イヌくん

四国のほか和歌山県、三重県だと南海トラフ沿いで発生する大地震が影響していると思われるよ。
今後30年以内に70~80%程度の確率でマグニチュード8~9クラスの巨大地震が起きると想定されているから、普段からの注意が必要だね。

関東地方は相模トラフや南海トラフでの海溝型地震の発生確率が高いとされていますが、茨城県水戸市については茨城県沖で今後30年以内に80%の確率でマグニチュード7.0~7.5程度の地震が発生する可能性があることも影響していると思われます。
また、北海道南東部は千島海溝沿いでの海溝型地震の発生確率が高く、根室沖では今後30年以内に80%の確率でマグニチュード7.8~8.5程度の地震が発生するとされています。
出典:地震調査研究推進本部「都道府県ごとの地震活動」

震度6弱以上の確率が低い地域

今後30年以内で震度6弱以上の地震が発生する確率が低い地域の表

焦るまもるくん

同じ北海道でも根室市が約80%に対して、旭川市は0.8%とこんなにも差があるんだね。

驚くイヌくん

震度6強以上になる確率で見ても、旭川市・函館市0.1%、札幌市0.2%に対して、根室市は29.3%と大きな差があるよ。

震度6弱以上の揺れが起きる確率の色分け区分
ただし、数字が低いからと言って安心できるものではありません。左の図は、確率の数字を色分けしたものですが、0.1%以上で「やや高い」3%以上で「高い」とされています。過去にも相対的に確率が低いとされていた地域で強い揺れに見舞われた地震が起きています。
直近では2005(平成17)年の福岡県西方沖地震(M7.0)、2007(平成19)年能登半島地震(M6.9)などで、強い揺れによる被害が出ています。

地盤が揺れやすい地域

地震で地盤が揺れやすい地域の表
「表層地盤」とは地表にごく近い地盤のことです。地震の波は堅い岩盤から表層の柔らかい地盤に伝わったときに増幅され、震度が大きくなります。
表層地盤増幅率は、この表層地盤の地震時の揺れの大きさを数値化したもので、数値が大きいほど揺れやすい地域であることを示しています。
評価はA~Eまでの5段階になっており、ランクEの場所は特に注意が必要です。

A(低め)   1.0未満
B(やや低め) 1.0以上1.4未満
C(中程度)  1.4以上1.8未満
D(やや高め) 1.8以上2.3未満
E(高め)   2.3以上
出典:防災科学技術研究所「地震ハザードカルテの見方」
解説イヌくん

ランクがAなどの場合でも、地震によるリスクがないことを表しているわけではないから注意してね。

まもるくん

ボクの家の周辺も知りたいな。

イヌくん

それなら防災科学技術研究所の「J-SHIS地震ハザードステーション」から調べてみよう。
日本全国を地域ごとに1区画250m×250mの範囲で評価しているから、自宅の周辺がどの程度揺れやすいか、どの程度の確率で強い揺れが起きるのかがわかるよ。

今後の影響は?

困ったイヌくん

今回の公表によって、近いうちに地震保険の保険料が見直される可能性が高いよ。

焦るまもるくん

えっ!そうなの?

地震動予測地図や、地震動予測地図を作成する際に用いられるデータは、学校などの公共施設の耐震化の検討、社会インフラ施設の耐震化事業の検討をはじめ地域防災対策、耐震設計などに活用されています。
損害保険の料率算定にも用いられ、地震動予測地図のデータのひとつである「確率論的地震動予測地図」の情報を基に地震保険料率の地域区分が見直されます。2011(平成23)年の東日本大震災後も同様の措置が行われました。
これらを鑑みて、冒頭で地震調査研究推進本部が上げた「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」の高い地域は地震保険料の値上げが予想されます。

まとめ

まとめと書かれた付箋を貼った壁

画像:mybearsさん/写真AC


笑うまもるくん

見た目の数値が低くても安全だというわけではないんだね。

OKイヌくん

うん、日本はいつどこで大地震が起きても不思議ではないから、日頃からの備えは大切だよ。
地震保険の加入もそのひとつだね。