自動車保険の加入は当たり前?
自動車事故が起きたとき、警察や相手方から確認されるのが保険に入っているかどうか?
法律で加入が強制されている自賠責保険は当然として、任意となっている自動車保険も多くの人は入って当然と考えるでしょう。しかし、全ての自動車が保険に入っているわけではありません。
損害保険料率算出機構が2020(令和2)年5月に発表した「自動車保険の概況」によると、自動車保険またはJAや全労済などの自動車共済に加入している自動車の割合は88.2%で、10台に1台は保険、共済いずれも加入していないことがわかりました。
もし自分が保険に未加入のまま事故の加害者になったらどうでしょう。相手方の治療、修理費用などの賠償はもちろん、自分自身の治療、修理費用も全額自己負担になります。更に「示談代行サービス」もありませんので、相手と直接交渉する必要があります。
相手が未加入の場合でも、同じことが起きます。きちんと賠償してもらえればいいのですが、途中で連絡が途絶えたり、責任を認めなかったり、「支払えない」と言って開き直られたりすることがあります。その場合、賠償や補償はどうなるのか見ていきましょう。
自動車保険の加入状況
加入状況についてもう少し詳しく見ていきましょう。
■自動車共済・自動車保険都道府県別対人賠償普及率〈2019年3月末〉
普及率トップ5
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普及率ワースト5
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都道府県 | 普及率 | 都道府県 | 普及率 | 富山県 | 92.3% | 沖縄県 | 78.4% |
香川県 | 91.6% | 鹿児島県 | 82.2% |
島根県 | 91.5% | 宮崎県 | 84.3% |
石川県 | 91.3% | 山梨県 | 84.3% |
愛知県 | 91.2% | 茨城県 | 84.4% |
出典:損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」(2019年度版)を基に作成
ちなみに東京都は85.2%、大阪府は88.0%でした。
関東地方は全国平均(88.2%)以下の都県が多かったね。
などと言われています。そのためか定かではないですが、多くの保険会社では「沖縄料率」と呼ばれる沖縄県独自の保険料率を設け、他の都道府県よりも安い保険料で加入ができるような仕組みをとっています。
一方、加入率が最も高い富山県。隣県の石川県も上位にいますが、新潟県、福井県と北陸4県はいずれも加入率が91%超と全国平均を上回りました。世帯当たり自動車保有台数が日本一を誇る愛知県は三大都市圏で唯一ランクインです。
保険に加入しない理由として、
など、いろいろあります。
なかには「自動車保険を知らなかった」という人もいるそうです。
知り合いから中古車をもらって自宅に戻るときも加入忘れが多いみたい。
無保険車にぶつけられたら補償はどうなる?
相手が自動車保険に加入していなければ、充分な補償をしてもらえる可能性は低いです
そこで様々な保険を利用する方法があります。
相手の自賠責保険を使う
まずは相手が加入している「自賠責保険」に請求することで、治療費、休業損害、逸失利益、慰謝料などが保険金で支払われます。請求は加害者、被害者いずれからも可能です。
もし自賠責保険にも加入していなかったときは、「政府保障事業」を利用することはできます。内容は自賠責保険に準じています。
ただし、自賠責保険、政府保障事業はいずれも支払われる金額に限度があり、損害額全部を賄えず、充分な補償を受けられないことがあります。また、治療費など身体に関する損害を対象にしているため、自分の車など物の損害は補償されません。
自動車保険を使う
相手方からの賠償が見込めなければ、自分や家族が加入している自動車保険で対応する方法もあります。
「車両保険」に加入していれば、自分の車両保険から修理費用を支払うことができます。通常、車両保険を使った場合、翌年の保険料が上がりますが、「無過失事故に関する特約」がついていれば、自分に過失がないなどの一定の条件を満たしているときに車両保険を使っても翌年の保険料は上がりません。
「人身傷害保険」に加入していれば、ケガによる治療費や休業損害をはじめ、本来なら相手方が払うべき逸失利益、慰謝料も支払われます。車両保険とは違い、保険を使用しても翌年の保険料はあがりません。
ただし、人身傷害保険のタイプが「契約している自動車に搭乗中のみ」の場合、契約している自動車の乗っているときの事故は補償の対象となりますが、歩行中に自動車とぶつかった事故では補償の対象外となるので注意が必要です。
万一、事故で死亡したり、重度な後遺障害となった場合には、「無保険車事故傷害特約」から保険金が支払われる可能性があります。この特約は人身傷害保険が付いていない、付いていても損害額をカバーしきれないときなどに適用されます。(※適用条件は保険会社によって異なります。)
自分に過失がなかったり、歩行中の自動車事故の場合には保険会社による示談代行サービスを受けられないことがあります。そのようなときは「弁護士費用特約」を付けることで、弁護士に相手との交渉、訴訟を依頼した費用を保険で賄うことができます。
自動車保険以外にも、傷害保険、医療保険に加入していた場合、定額で保険金が支払われる可能性があります。また自宅の建物や門、塀などを壊された場合は、火災保険で修理費用を支払うことも可能です。
まとめ
自動車事故で被害にあったら、相手が支払ってくれるものと考えていた人は多いと思います。しかし、相手が無保険車の場合、自賠責保険による最低限の補償しか受けられません。このような場合に備えて、自動車保険の加入はもちろんのこと、補償内容を見直してみるのもよいでしょう。