裁判所入口

自動車事故での高額賠償額っていくら?

私たちに最も身近な保険と言えば、自動車保険と生命保険でしょう。
自動車やバイクは、旅行やドライブといったプライベートでの使用だけでなく、むしろ通勤や配送、外回りの営業といった仕事で使う方も多いと思います。警察庁「運転免許統計」によると、運転免許保有者の総数は8,198万人(2020年末現在)になるそうです。
出典:警察庁『運転免許統計(令和2年版)』

イヌくん

運転免許の保有者数は2018(平成30)年の8,231万人をピークに2年連続で減少しているけど、大勢の人たちが利用たちが利用しているよ。

まもるくん

利用が多ければ、その分事故も起きるよね。もし自動車事故を起こしたら賠償はどのくらいの金額になるんだろう。

OKイヌくん

そんな気になる賠償額を、人身事故と物損事故それぞれ、裁判所が判決で出した高額な賠償事案を紹介するよ。

対人事故の損害額TOP10

解説イヌくん

まずは対人(人身)事故から見ていこう。

順位 認定総損害額※1 事故日 判決日 被害者の職業等 被害者
の状態
1 5億2,853万円 2009/12/27 横浜地裁
2011/11/1
41歳男性 眼科医 死亡
2 4億5,381万円 2009/1/7 札幌地裁
2016/3/30
30歳男性 公務員 後遺障害
3 4億5,375万円 2012/11/1 横浜地裁
2017/7/18
50歳男性 コンサルタント 後遺障害
4 4億3,961万円 2010/11/9 鹿児島地裁
2016/12/6
58歳女性 教諭 後遺障害
5 3億9,725万円 2003/9/14 横浜地裁
2011/12/27
21歳男性 大学生 後遺障害
6 3億9,510万円 2007/4/13 名古屋地裁
2011/2/18
20歳男性 大学生 後遺障害
7 3億9,095万円 2009/12/3 神戸地裁
2017/3/30
32歳男性 ティーチングアシスタント 後遺障害
8 3億8,281万円 1998/5/18 名古屋地裁
2005/5/17
29歳男性 会社員 後遺障害
9 3億7,886万円 2002/12/11 大阪地裁
2007/4/10
23歳男性 会社員 後遺障害
10 3億7,370万円 2010/7/20 東京地裁
立川支部
2014/8/27
7歳男性 小学生 後遺障害

出典:損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」(2019年度版)より抜粋

  •   *1 「認定総損害額」とは、被害者の損害額(弁護士費用などを含む)をいい、被害者の過失相殺相当額および自賠責保険などのてん補額を控除する前の金額をいいます。

イヌくん

事故日からわかるとおり、近年は対人(人身)事故に対する判決で高額な損害額が認定されているよ。
また、被害者を死亡させたときは勿論のこと、後遺障害を生じさせたときでも高額化していることがわかるね。

最も高額になったケースでは、被害者が開業医かつ高額な収入であったことが考慮され、5億円以上の損害額が認定されました。学生や会社員など身近な職業の方たちでも認定額が3億円を超えています。
解説イヌくん

実際に保険金が支払われる際は、被害者および加害者の過失割合が考慮されるよ。眼科医の事故では、被害者が酩酊状態(酔っ払っていた)で事故にあったため、被害者側に60%の過失があったと認定されたんだ。

まもるくん

過失割合分が損害額から引かれるんだね。

物損事故TOP10

イヌくん

続いて物損事故を見てみよう。

順位 認定総損害額※1 事故日 判決日 被害物
1 2億6,135万円 1985/5/29 神戸地裁
1994/7/19
積荷
(呉服・洋服・毛皮)
2 1億3,450万円 1991/2/23 東京地裁
1996/7/17
パチンコ店
(建物・パチンコ台)
3 1億2,036万円 1975/3/1 福岡地裁
1980/7/18
電車・線路・家屋
(wikipedia「西鉄特急脱線事故」)
4 1億1,798万円 2007/4/19 大阪地裁
2011/12/7
トレーラー
5 1億1,347万円 1992/9/14 千葉地裁
1998/10/26
電車
(wikipedia「成田線大菅踏切事故」)
6 6,124万円 1996/9/26 岡山地裁
2000/6/27
積荷
7 4,141万円 1999/9/25 大阪地裁
2008/5/14
積荷
8 3,391万円 2001/3/9 名古屋地裁
2004/1/16
大型貨物車・積荷
9 3,156万円 1999/11/5 東京地裁
2001/12/25
4階建てビル
10 3,052万円 1999/5/16 大阪地裁
2001/8/28
店舗
(サーフショップ)

出典:損害保険料率算出機構「自動車保険の概況」(2019年度版)より抜粋

  •   *1「認定総損害額」とは、被害者の損害額(弁護士費用などを含む)をいい、被害者の過失相殺相当額などを控除する前の金額をいいます。

物損事故では、乗用車がガードレールを壊したといったケースよりも、事故により相手方の積み荷が破損したといったケースの方が高額になるようです。また修理費用のほか、店舗が営業できなかったこと等による休業損害の賠償義務も発生することがあります。
なお、日本における裁判所が認定した対物事故の最高損害額は、何と32億8,900万円

焦るまもるくん

32億円!?

焦るイヌくん

これは2008(平成20)年8月3日、首都高速池袋線熊野町ジャンクション付近で発生したタンクローリー横転火災事故によるものだよ。
この事故では自動車共済に加入していたけど、対物賠償の限度額が「10億円」までだったため、高速道路会社が差額分を運送会社と運転手に請求したんだ。でも運送会社は事故直後から事業停止に追い込まれ、2016(平成28)年7月14日、東京地裁で判決が出た直後に破産したよ。

悩むまもるくん

今は会社がないんだね・・・。

まとめ

解説イヌくん

今回、裁判に至った事例を紹介したけど、事故の90%以上は「示談」、裁判に至ったケースでも70%以上が「和解」で解決しているんだ。つまり高額な賠償事案は数多くあるということ。

自分がどれだけ注意をして運転していても事故は起こります。そして誰もが加害者の立場になってしまう可能性があります。
もしものときに備えて、対人・対物賠償保険の保険金額は限度額の定めのない「無制限」にしておくことが大切でしょう。