2年連続の値下げ
金融庁は2021(令和3)年1月18日、損害保険料率算出機構から届け出があった自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の保険料改定について審議会を実施し、2021年4月から全車種平均6.7%引き下げ(値下げ)することを決めました。
保険料が安くなるのはうれしいな。
消費税の増税などで日常生活の様々なものが値上がりしている中だから値下げのニュースはインパクトがあるね
でも、保険料が安くなったぶん補償内容が変わったりするのかな?
自賠責保険料がナゼ値下げされたのか、補償内容は変わらないのかを見ていこう。
保険料はどう変わるの?
2020(令和2)年4月にも保険料改定が行われ全車種平均16.4%引き下げられましたが、今回の改定では6.7%と小幅な引き下げにとどまりました。
とはいえ、2年連続で保険料改定が行われたのは1959(昭和34)年、1960(昭和35)年以来となり、2年連続での引き下げは初めてのことです。
自賠責保険の保険料は2000年以降ほぼ3年ごとに改定がおこなわれてきたから、今回の改定は異例かもしれないね。
■保険期間24か月(2年契約)の場合
■保険期間36か月(3年契約)の場合
出典:損害保険料率算出機構「自賠責保険基準料率表(2021年1月15日金融庁長官への届出)」
全体的には値下げとなっているけど、1年契約(保険期間12か月)の原動機付自転車については、7,060円から10円高くなって、7,070円になるよ。
なぜ値下げになるの?
それで、保険料が安くなった理由は?
ズバリ交通事故が少なくなったからだよ。
交通事故の発生件数は2004(平成16)年の95万2720件をピークに、2020(令和2)年には30万9000件(速報値)まで減少しました。
交通事故による死者数は前年より376人少ない2,839人となり、統計調査が行われるようになって初めて3,000人を下回りました。また負傷者数も前年から約9万人減少の36万8601人と1963(昭和38)年以来の40万人以下となりました。
■交通事故死者数の推移
■交通事故負傷者数の推移
出典:警察庁交通局「令和2年中の交通事故死者数について」
交通事故が減って、被害者も少なくなったのはいいことだね。
2017(平成29)年、2020(令和2)年の改定でも交通事故の減少が主な理由だったけど、今回は新型コロナの感染拡大に伴う外出自粛も影響しているんだ。
「滞留資金」とは、「過去の自賠責契約における収入純保険料と支払保険金の差額の累計」と「保険が契約された時から保険金支払いまでに生じた利息の蓄積」を合計した額のことだよ。
その他にも、ドライバーを支援する先進安全技術の普及促進による事故の未然防止も引き下げの理由に挙げられています。
今後はどうなるの?
自賠責保険は社会政策的な側面を持つ制度上、保険料は「適正かつ安く」するよう法律で定められ、利益や損失が生じないようノーロス・ノープロフィットの原則に従って算出、決定されます。
自動車損害賠償保障法
(保険料率及び共済掛金率の基準)
第二十五条 責任保険の保険料率及び責任共済の共済掛金率は、能率的な経営の下における適正な原価を償う範囲内でできる限り低いものでなければならない。
この原則によって毎年収支が均衡しているか検証がおこなわれているよ。
そのため、損害率が上昇し保険金の支払いが増えれば保険料を上げ、損害率が減少し保険金の支払いが減れば保険料は下げることがこれまで繰り返されてきました。
今回は滞留資金が想定よりも増加したため、2021(令和3)年度から2025(令和7)年度までの5年間は滞留資金を活用することで保険料を引き下げる余地があるとされています。
しばらくは保険料が安くなるかもしれないけど、滞留資金が減少し、損害率が上昇すると保険料が値上げされる可能性があるんだね。
2008年の保険料改定では24.1%も値下げがされたけど、2011年に11.7%、2013年には13.5%と値上げが続いたんだよ。今後も大きな値下げと大きな値上げが繰り返されるかもしれないよ。
保険料以外にも、レベル3(条件付運転自動化)またはレベル4(高度運転自動化)での自動運転システムの実用化、普及促進にともない、保険会社が事故状況を正確に把握できるよう約款が改定されます。
具体的には、保険契約者は保険会社から事故発生時に自動運転システムを利用していたかどうかの通知、走行データ等の提出などを求められるようになります。
この改定で保険会社は自動運転システムに不具合があった場合、自動車メーカーなどに求償権行使ができるようになるよ。
まとめ
自動車を所有している限り自賠責保険に加入しなければならないから、保険料が安くなるのはありがたいな。
そうだね。ただ、自賠責保険は対人賠償のみで、限度額があるから自動車保険にもきちんと加入しておかないとね。