マンションに水災補償は不要って本当?

火災保険は自然災害で家屋や家財が壊れたときも補償の対象になりますが、ここ数年は台風を中心とした自然災害によって被害が増加し、火災保険金の支払いも年々増えてきています。

困り顔の小寧さん

また火災保険料が値上げになるのね。契約内容を見直そうかしら。

火災保険の保険料は2019(令和元)年10月に値上げされましたが、2021(令和3)年1月にも保険料が改定され全国的な値上げがおこなわれます。



イヌくん

不要な補償がないか、補償が足りているか見直しをするのはいいことだよ。

小寧さん

そうね。ウチはマンションだから洪水の補償は不要かな。

驚くイヌくん

ちょっと待って!マンションでも補償が必要な場合があるから、よく確認してからにしたほうがいいよ。

高層建築物のマンションは洪水による被害はほとんど起きないと、補償内容からはずされることが多いですが、本当にはずしても大丈夫なんでしょうか?

水災補償とは?

「火災保険」では、台風、暴風雨、豪雨などによる洪水・融雪洪水・高潮・土砂崩れ・落石などの水災によって発生した損害も契約時の保険金額を上限に、実際の損害額が保険金として支払われます。

イヌくん

保険金が支払われるためには以下の条件のうちいずれかをクリアしている必要があるよ。

  • 建物が床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水
  • 火災保険の補償対象となる物の再取得価額(同じものを新たに建てる費用、購入する費用)の30%以上の損害が発生した場合
小寧さん

家の中にまで水が入ってこないと補償されないのね。

解説イヌくん

うん、フローリングや畳の上まであがってくる必要があるよ。

疑問な小寧さん

マンションだとそこまで水がくるのかしら?

マンションが水災被害に遭う可能性は?

国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」から東京都内の想定される最大規模の浸水区域と水深を調べたところ、以下の場所で5~10mの浸水が予想されています。

  • 足立区千住、新田地区
  • 葛飾区小菅、堀切、立石地区
  • 北区志茂、浮間、舟渡地区
  • 板橋区坂下、蓮根、高島平地区
  • 墨田区墨田地区
  • 江東区北砂地区など

国土交通省「ハザードマップポータルサイト」トップページ


イヌくん

マンションの階高(建物の各階の高さ)は3~4m位が中心だから、水深10mの浸水となったら4階あたりまで水が来ることになるね。

驚く小寧さん

えっ!そんなところまで水が来ちゃうの!?

解説イヌくん

これは、荒川流域で72時間以内の総雨量が632㎜となり、荒川のいずれかの場所から氾濫したときを想定しているよ。水深3~5mになると浅草・上野・銀座あたりでも発生が想定されているから、広範囲に被害が及ぶかもしれないね。

水深5m以上の浸水が想定されている場所は「海抜0m地帯」に多く見受けられます。この「海抜0m地帯」は東京都だけでなく、神奈川県横浜市から千葉県千葉市までの「東京湾」、三重県三重郡川越町から愛知県東海市までの「伊勢湾」、兵庫県芦屋市から大阪府大阪市までの「大阪湾」とそれぞれの周辺に存在し、洪水のみならず高潮、地震による津波などの被害の恐れがあるとされています。

小寧さん

マンションでも下のほうの階だと被害に遭う可能性があるのはわかったわ。もっと上なら大丈夫ってことね。

残念イヌくん

上の階だからといって安心できないこともあるんだ・・・。

ベランダからの浸水に要注意!

洪水の浸水は河川が増水して堤防からあふれ出す「外水氾濫」だけではなく、側溝や下水道などに雨水が集中し排水能力をオーバーしてしまう「内水氾濫」によるものとがあります。近年、都市部では「内水氾濫」による浸水も懸念されています。

疑問な小寧さん

それがマンションとどう関係するの?

マンションのベランダに溜まった雨水は、一般的には溝をつたって排水管に流れていきます。しかし豪雨で排水管への雨水が集中して処理しきれなくなった場合、ベランダに水が溜まったり、排水管から水が逆流し、そのまま室内に浸水する可能性があります。このようなときも水災補償の対象になります。下水管が処理しきれずトイレや浴室の排水口から逆流してきたときも同様です。

イヌくん

飛んできた枝や葉っぱ、土などが排水管を詰まらせたために浸水した場合は、「給排水設備の事故」として補償の対象となるけど、そのような原因がなかったときは「水災補償」をつけていないと補償されないということだよ。

戸惑う小寧さん

マンションだからって絶対大丈夫だとは言えないのね・・・。

その他の注意点は?

解説イヌくん

今回の内容は自分が所有している部分(専有部分)についてのことだよ。
マンションのエントランスや廊下、機械設備など(共用部分)は所有者で構成されるマンション管理組合が保有しているから、その部分については別途、管理組合が火災保険に加入する必要があるから注意してね。

マンション管理組合が加入する「マンション総合保険」にも水災補償がありますが、基本補償ではなく特約となっているため、補償内容からはずれているケースが多いです。

小寧さん

自分の火災保険だけでなく、管理組合で加入している保険も確認したほうがいいってことね。

OKイヌくん

そのとおり!万一、補償がなく修繕積立金が不足していたら、マンションの所有者全体でお金を出し合うことになるから、きちんと確認することが大切だよ。

まとめ

2019(令和元)年10月の台風19号では、東京都世田谷区や神奈川県川崎市のタワーマンションで浸水被害が発生し、住民の生活に著しい影響をもたらしたことは記憶に新しいところです。洪水の被害は階下のみではなく、マンション全体に影響を及ぼす可能性があります。各自治体で作成されているハザードマップなどをもとに周辺の浸水予想を確認し、水災補償を検討することが大切だと思います。